十戒 The Ten Commandments 1956
十戒は1956の超大型映画。
エジプトに痛めつけられたユダヤ人が怒り心頭に達して、紅海を真っ二つに隔てて脱走するお話。いわゆる出エジプト、エクソダスを描いています。もとは兄弟、後に宿敵となる冷酷無比な第三代ファラオのラメセスをユル・ブリンナーが演じています。
海が真っ二つ
海が真っ二つというお話はこの映画以降ずいぶんと有名になり、ハリウッドに行くと特殊撮影に使われた海域分離撮影用プールがまだ現存しています。もはや世界の常識となったモーゼの行進は別の超B級映画 2048でも見ることができます。
未知との遭遇のポスターは海割れが原型か?
画面の印象からして、本作の筋書きをベースに敷いた未知との遭遇の良く知られたクラッシックポスターは、上の海まっぷたつのイメージからインスパイアーされたのかも知れませんね。
40は特殊な数字
それにしても、旧約聖書とは神と人間の契約を記述しているもので、モーゼ経由でわざわざ神様直筆の十戒までもらっているのに、ちょっと気が緩むとすぐに堕落するのが人間の性分。さんざん苦労したはずなのにエジプトを出てから約40日間で酒を飲んで乱痴気騒ぎ、およそ他人の迷惑を顧みない状態が始まります。ノアが箱舟で漂流する間にも搭乗している家族の間で神の意思を疑い始めるのに40日、聖書にはこの40日間という間が良く出てきますが近代のわれわれでも1ヶ月と10日程度で、もうギブアップというのがなんとも情けないものですね。
ユル・ブリンナーと禁煙
当時、大型映画に出てくる筋金入りのすごい俳優として、チャールトン・ヘストンやユル・ブリンナーはひっぱりだこでした。
とくにブリンナーが西部劇でガンマンを演じると、目線だけで降参したくなるような迫力でした。
その本人は、タバコの吸いすぎで肺をわずらい、亡くなってしまいましたが、晩年に公共広告に出演しており、内容は、
「タバコを止めてください」
というものでした。
多分楽屋で出番待ちの時間手持ち無沙汰だったのでしょう。
当時スマホか8bitゲームでもあれば良かったのですが。もっといろいろな仕事を見せてほしかったですね。
エルマー·バーンスタインのプレリュード
モーセの十戒
せっかくだから十戒に書かれている戒めをよく読んでみましょう。
- 主が唯一の神であること
- 偶像を作ってはならないこと(偶像崇拝の禁止)
- 神の名を徒らに取り上げてはならないこと
- 安息日を守ること
- 父母を敬うこと
- 殺人をしてはいけないこと
- 姦淫をしてはいけないこと
- 盗んではいけないこと
- 偽証してはいけないこと
- 隣人の家をむさぼってはいけないこと
面白いのは、難しいことは何一つ言ってないところにあります。
例えば腕力を鍛えて円盤投げで月に命中させなければいけないとか自分の先祖を200代まで遡ってすべての爺さん婆さんの名前を言えなくてはならない、なんてことは書いていません。
まともな生活をしている人はまず間違いなく簡単に守ることができますが、それでも失敗する人が出るというのが人間の実情のようです。
同じような宗教映画で仏陀再臨というのを見てみましたが、こちらでも仏様による説話が出てきますが、正常な神経をしていれば普通に行えることばかりで、15分おきに衣服を着替えよなどという難しいことは要求していません。つまりまともに生活するための最低限度のマナーを説いているのが主流宗教の共通点のようですね。
聖書読んだことありますか?
じつは自宅に日本語で書かれた新旧二冊がありまして、話のネタとして読んでみたのですが、非キリスト教徒の気楽な感想としては、
- 旧約のほうが面白い。パニック・ファンタジー・冒険・SF要素の塊だから。
- 新約のほうは話が平たくて手が伸びない。
- 挿絵がない。ギュスターブ・ドレが起こした劇画調の挿絵をめくって、初めて全てを理解できたような希ガス。
もしもキリストの最初期の弟子たちに、ひとりでも腕の良いイラストレーターが居たならば、世界中に広まるスピードはもっと速かったかもしれませんね。
身近なもので仏教の経典ですが、葬式のときの読経は、もっと分かりにくいものです。
漢字からカタカナ・ヒラガナを開発した日本人が、どうしてこの分野だけ直輸入のまま手をつけなかったのでしょうか。
いまでいう、デカ字幕で解説してくれていれば、もっと理解しやすかったかもしれません。