決死圏SOS宇宙船 Journey to the Far Side of the Sun
Journey to the Far Side of the Sun AKA Doppelganger.
謎の円盤UFOのジェリー・アンダーソンによる映画。それまでやってきたサンダーバート等のスーパーマリオネットを脱却した人間の俳優による映画で、後に制作されるUFOのパイロット版ともいえます。
Wikiより決死圏SOS宇宙船
出演はUFOのストレイカー司令官、フリーマン大佐、ドクタージャクソンなど良く見るメンバーが勢ぞろいしています。
大昔にTVで放映していた吹き替え版で、私もリアルタイムで放送を拝見いたしました。当時太陽にほえろに出演していた露口茂さんが声を当てた、すばらしい作品です。
宇宙服とヘルメットはUFOの原型です。
ちなみにUFOのスカイダイバー危機一髪の回にでてくる東洋系のチェン少尉もこの映画にウランバートル(モンゴルの首都)の哨戒員として出演しています。反地球に到達した主人公が初めて接触する、あっちの世界の人第一号ですね。
話の内容は太陽をはさんで地球と正反対の位置にもうひとつの惑星が存在し、コリャなんだ? という疑問から有人飛行を敢行するという流れです。
イギリス映画らしく、最初は諜報戦から始まり、予算の獲得、発射するまでの手続きがしっかり描かれております。
ジェイソン・ウェッブ司令官を演じたパトリック・ワイマーク氏は有名な映画俳優で、荒鷲の要塞ではリチャード・バートンによって飛行機から放り出されます。本編の書き込みでも確認することができます。
ネタバレとなりますが、最後のシーンでは故郷への帰還に失敗した離陸船の墜落で発射基地ともどもすべての証拠が失われてしまい、本来極秘で進められていたプロジェクトゆえに反地球から来た人物のデータも根こそぎなくなってしまいます。ただ一人それを知っていたウェッブ司令官もアルツハイマーが始まっていて、地球と正反対の惑星は歴史の闇の中に葬られてしまいます。
用語として面白いのは手動をてどうと発音していることです。当時の吹き替えミスか、素人相手でもはっきり分かるようにしたのかは定かではありませんが、いづれにしてもいわゆるマニュアルオーバーライドのことです。
また、当時一般的にはコンピューターはおろか電卓さえなかった時代にもかかわらず、シャットダウンという用語が使われているのが珍しい限りです。私はunixのワークステーションを落とすときにシャットダウンコマンドを打ち込んだのが初めての体験でしたが、今ではみなさんがパソコンを終了させるときに一般的に使っている操作です。
印象的なのは、後にUFOの中でストレイカー司令官のデスク背後にある走馬灯のような壁面の模様がこの映画で多用されていることです。
地球から反地球に向かう時点でかけられるハイバーネーションのシーンや、現地についたパイロットが事態の解決案を悟るまでのシーンに使われています。座席に座ったまま人工血液を還流させて眠る方法は、ずっと後でリディックにもパクられて居ましたし、冒頭部分の諜報戦で義眼カメラを取り出すシーンは、ターミネーターが破損した目玉を取り出して自己修復するシーンのインスパイアー元かと思われます。
なんといってもコンピューターが動作しているときに、いちいち機械音がしているのがそれらしい雰囲気を出しています。ディスクをシークしている音、オープンリールがスピンアップする音、今では博物館かよほど特殊な職場でなければ使われていない紙パンチリーダーなどがラグタイムを感じさせます。今のコンピューターでは、CPUとグラフィックバッファの冷却ファン以外めったに音がすることはありませんよね。
打ち上げシークエンスも専門用語満載で、同年に作られた宇宙からの脱出と同様、当時のアポロ計画から連想される複雑な手続きで臨場感がタップリの作品です。
しかしそんなに処理速度の遅いマシンとアプリで、本当に月着陸とかできたのでしょうか? 優秀な機械工学の専門家が大量のケロシンを積んだロケットを物理学者の導いた弾道計算に載せることができれば、太陽系はさほど広くないフィールドなのかもしれません。
Contactとの類似性
最後に、たいそうな国家予算をつぎ込みながらも実際には何一つ得られなかったということに対して審問会が行われるところは、カール・セーガン博士がコンタクトの中にパクっているように思えてなりません。
芝居の中では、地球から反地球までわずか20日という工程で目的地に到着したパイロット。
地上クルーから見るとそっくりのドッペルゲンガーが到着したことにより、パイロットがミッションを中断して戻ってきたように見えています。
プロダクションの意図としてはそっくりさんが現れたので、まさか当初の目的を達成しているとは夢にも思わない地上班の反応を描いておりますが、客観的に見ると東西冷戦のさなか膨大な予算をつぎ込んで結局何の結果も得られなかった、それが科学が直面する現実問題だという主題からして、セーガン先生もこの映画がお気に入りで、コンタクトのベースストーリーに敷いたように思われます。
プロットは、
プロット | 決死圏SOS宇宙船 | コンタクト |
---|---|---|
情報に関する諜報戦 | 反地球の発見 東側への情報漏洩を防ぐためフリーマンがスパイを銃殺。結果は東側に漏れて発射までの期限が早まりプロジェクトの推進に役立つ。 |
ヴェガからのコンタクトに反応した砂漠の巫女ジョディー・フォスターが政府の承認も待たずに全世界に情報を開示。 |
実行予算 | 東西冷戦のさなかなので反陣営を出し抜くため秘密計上される英国式。 | 人類史上最大の発見なので各国のジョイントプロジェクトとなる。 |
工程 | 片道20日の冷凍睡眠旅行 | 亜空間を使った36時間程度の旅行 |
地上から見た客観経過時間 | 全工程40日を20日で帰ってきたように観測される。 | 一瞬で終わっている。 |
なお、主人公たちがいろいろ苦労の末、かなり時間がたってから元いた場所に戻ってくるのに対して、客体から見るとそれが一瞬で終わったように見えるというネタはSFでは良く使われる手で、古くは浦島太郎のお話にも帰還時の現地経過時間があまりにもかけ離れていて本人がとまどったという一種のローレンツ短縮系物語となっている場合が多く見られます。
主な話のネタ
反地球
決死圏SOS宇宙船
ドッペルゲンガー
光学異性体・・・反地球ではすべてが左右対称という仮定を突き詰めて考えれば、食べ物に含まれるアミノ酸も光学異性体が多く含まれて、現地の食事では栄養失調になるのではないかという書き込みがあって興味深いです。日本では高校の化学に出てくる話で、スタートレックの小説版にも同様のトリックが登場する話があります。つまりスタトレは高校生程度の科学知識を持つ人たちをターゲットにしているということですね。
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