ノウイング KNOWING

アレックス・プロヤス監督の至宝の名作
50年前のタイムカプセルからやばい予言が出てきました。

字幕か吹き替えがほしい人は、DVDを買いましょう。

こんどはやばいぞ、ニコラス・ケイジ

 

 

 

ノウイングのネタ元は?

これから視聴するかたと映画会社および監督・ニコラス・ケイジさんのために、ネタ晴らしはいたしませんが、一度早送りせず、じっくりごらんになる事をおすすめします。

敢えていうならば、ナイトシャマラン監督のハプニングのようなすっぽ抜けはありません。ちゃんと落としています。シャマラン監督は昔の映画アンドロメダ細菌株の結末が、「猛毒性の結晶体生物が突然変異で無害になりまスた」という結構軽い終わり方だったので、あれくらいでもOKと類推したのでしょうが、とんだ誤算でした。

作品の最初に出てくる親子の会話でおそらくドレイク方程式についての言及がありますが、とても重要な伏線です。

見ていて気づいたのは主だる話の筋としてクリス・ネヴィルの「ベティアンよ帰れ」が使われているのではないかということです。
この作品については日本SF界の初期から各種作品を翻訳している矢野徹先生のページに書いてあります。内容は本を買って読んでみてください。恐ろしく昔の子供用SFの本に「夜明けの惑星」と「ベティアンよ帰れ」のカップリング本が存在します。まだ通販で買えるかも。(私は一度手放した関係で近年再購入しました)

 

連想される小説は?

50年も前からの予言、数千年前からの伝承による空中けいきょ、神と思しき異星人の想像を絶する播種船。

天体物理学者のニコラス刑事がそれらすべてを考え合わせて、息子のケイレブに何が起きるのかを把握したとき、彼は地面に両膝をついて絶望します。

数字の羅列を手がかりにこれまで調査したことは、避けることのできない事実。地球に残る自分たちを待つ滅亡という運命。最愛の息子と別れることになるものの、彼らを出発させることだけが今までの歴史にこめられた人類の存在意義。

クラークの幼年期の終わりを想起させるお話です。

唯一の救いは、新人類が新世界に到達するまでの時間が早いことです。クラークの小説ではオーバーロードが地球に来てから数百年後に姿を表し、それ以降、そうとうの時間をかけて新人類が生まれてきますが、本作品は映画なので、2時間くらいで片がつきます。地球の運命を科学的に掌握できたニコラス刑事の学説は、発表される前に、文明が滅んでしまいました。

出演者

ニコラス刑事

劇中で発生する第二の事件、地下鉄での大事故に至る最中、警察官に追われるシーンがあります。その際前方を逃げ惑うカッパライを指して「あいつが犯人だ」という状況になり、自分は容疑を免れますが、ここはひとつ通販で買った警察手帳でも出して「刑事のニコラスだ」くらいのことをやってくれたら・・・ギャグになってだめですね。

芝居が始まって、かなり早い時期に、もともと妻を事故で亡くした経験があるので、すぐに酒びたりになるクセがあるという描写が繰り返し描かれています。ウイスキーをがぶ飲みして、耳にする音楽は後述の第七ばかり。

ここでひとつ、ピアノの弾き語りでもして、おきてきた息子に「お父さん、うるさいよ」とやってくれたら・・・またギャグですね。

ローズ・バーン

ノウイング KNOWING主演している役は、現代に生きている母親役ですが、その母親役も2役で演じています。子供役を演じている役者は、ララ・ロビンソンというお嬢ちゃんで、これまた先代のルシンダの子供時代を演じています。

ローズ・バーンはオーストラリアの女優さんで、ノウイングに出る前は、サンシャインで勢いのなくなった太陽に核爆弾をぶち込んで地球を救っているのですが、それが効き過ぎたようで、今回の太陽はソーラーフレアを出しまくってしまいます。

 

ララ・ロビンソン

ノウイング KNOWING一人でルシンダとアビーの二役をやっています。

最初に見たときには、しょっぱなから髪の黒い心霊少女みたいなのが出てきて「うわ、気味悪い」と思わせてくれるのですが、途中から出てくるアビーと同じ俳優さんだとは思いませんでした。メーキャップがうまいのか、女優さんがうまいのか。

解説を読んで初めて、2役だと気づいてびっくりしました。ローズ・バーンが二役やっているのはへたくそなフォトショップで作った昔の写真だけなので、これはすぐに分かったのですが、たいした子役です。

で、ローズ・バーンとララ・ロビンソンが二人で、二世代分の親時代・子時代を演じ分けているのですが、その理屈が分かってくると、何度もDVDを見ているときに、組み合わせが複雑になってきて頭がこんがらがってきます。

チャンドラー・カンタベリー

ノウイング KNOWINGニコラス父さんの家の息子で、ケイレブを演じています。他の出演者に比べて、なんせ子役なので、一番不安がありましたが、うまく仕事ができたようです。

 

最近ではレポマンにも出ていますが、どこで現れたか、覚えていません。

 

 

アレックス・プロヤス監督

 

アイ・ロボットはいまいちでしたが、ダーク・シティーはすでにカルト映画。この監督さんは第二のキューブリックかも知れません。

 

 

 

ノウイング KNOWING 気になるBGM

交響曲第七番 第二楽章 不滅のアレグレット ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

天体物理学者のニコラス・ケイジが、亡くなった妻を偲んで聴いている曲はベートーベンの第七 第二楽章
映画音楽としては、知る限りタルコフスキーのソラリスと米国映画未来惑星ザルドスに使われていたことがあります。
この交響曲は実は明るくてテンポも良く、彼が作曲した作品の中でも、かなり一般受けする曲なのですが、第二楽章は極めて重く、特に暗い曲想の部分を取り出してよく映画に使われます。

作品の終盤で第二楽章 = 不滅のアレグレットがかかりだすと、「もはやこの世の終わりでどこにも救いが無い」という気がして、とても他人事とは思えなくなります。

キアヌ・リーブスの地球が静止する日のトレーラーで使われていたミニマル・ミュージックを聴いたときに「これはすごい映画だ」と思ったものの、本編のどこにもそんな音楽は入っていなくてがっかりした覚えがありますが、今回はぴったりはまりました。ハートにズキューンと残ります。

 

不滅のアレグレットを聴いたことのない方へ

ちょうどいいネタがありました。この美人はみなさんご存知スカーレット・ヨハンソンさんで、ノウイングには出ていませんので悪しからず。そのかわりアイランド等のSF物にもたまに出てくれる新進女優さんで、子供の頃にはへんなB級映画スパイダーパニック!ホームアローン3にも出ていました。ちょっと前にはヤンキースのデレク・ジータと付き合ってたそうです。
Wikiより アイランド | スパイダー パニック!
コロンビア大学の学生さんたちが演奏した作品を視聴することができます。
コロンビア大学オーケストラ部の視聴ページ
第二楽章のmp3ただし、今までいろいろな第七を聴いたことがありますが、個人的には岩城広之先生の指揮による作品が、もっとも心を揺り動かされました。

ベト7

ベートーベンの第七だけのページ

そもそもクラッシックとは楽譜に記された制限があるだけで、演奏方法は指揮者の創造力にお任せしますという作曲家の委任状のような物なので、名だたる指揮者は音符の一つ一つに独自の解釈を付けていく関係上、それぞれ異なる演奏が生まれてきます。では聞き比べて見ましょう。

 

交響曲第七番

ノウイング BGM 第七 第一楽章

指揮はベルベルト・フォン・カラヤン先生ですぜ。

第二楽章

これが問題の不滅のアレグレット

ダンテの神曲の出だしで「人生半ばでふと路を失い、暗い森を彷徨っている中で云々・・・」というくだりがあり、それで彼は賢者ヴェルギリウス(英語ではバージル)とともに地獄・煉獄・天国の旅を始めるのですが、この曲はまさにその音楽版という気がします。

バイオリンが奏でる音は一そうの小舟が川面を流れていく様子。船には櫂が無く、水の流れに囚われたまま、どこまでも進んでいってしまい、大波・嵐・みんなの大好きなディザスターなど、自分の意図しない展開が起こるのが人生の縮図。

第三楽章


心の奥底に巣食う精神に深く向き合うとき、この曲をかけていると、とめどなく広い世界へ誘われるようで、ふと正気に戻ってみると世界中が大パニックになっていた。なんて事にはならないでしょう。カラヤン氏が宿泊先のホテルに要求するのは、ドイツ語で、
「このフロアにかかっている音楽を全部消せ」という高尚なる命令で、世界的に有名な先生だったので、ホテル側は通路や共有部分にかかっている軽音楽をこぞってミュートしたということですが、それを日本語に翻訳すると、
「やかましいから静かにしてちょ。眠たいんだから」といったところでしょうか。

第四楽章

で、ほんとはこの交響曲は、このようにとても明るくテンポの良いものです。第二楽章だけ切り取って使っている映画屋のみなさんは、いつかこの4章もどこかで適用してみてほしいものですね。

One reply on “ノウイング KNOWING”

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください