黎明の子、明けの明星よ、あなたは天から落ちてしまった。
もろもろの国を倒した者よ、あなたは切られて地に倒れてしまった。
イザヤ書 14:12
一敗地に塗れたからといって、それがどうしたというのだ? すべてが失われたわけではない。
まだ不屈不撓の意思、復讐への飽くなき心、永久に癒すべからざる憎悪の念、降伏も帰順も知らぬ勇気があるのだ。
敗北を喫しないために、これ以外何が必要だというのか?
ロジャー・コーマンが監督した、いにしえの名画。
出演はスパイ大作戦のピーター・グレイヴス、ニューヨーク1997のリー・ヴァン・クリーフ。
左側のサムネイルはMST3K = ミステリー・サイエンス・シアター3000という米国のTV番組で取り上げられたバージョン。古い映画をほじくり返して来て、みんなで大笑いしましょうという趣旨の番組で、おそらくニコニコ動画とかツイッターの発想の元ネタです。
前振りが長いので、本編が始まるのは15分後から。
金星旅行というよりも、金星からお客さんが地球に来たという話です。
コーマンは非常にやり手のプロデューサーで、おもにお車の映画館向けのB級映画を大量に制作しました。この経営手腕から、安定した映画産業の基盤を築いたため、彼の門下生とも言える俳優、監督さんたちが大勢登場しました。キャメロン、コッポラ、スコセッシなどの名だたる監督さん、デニーロ、ホッパー、ニコルソンなどの俳優さんたちはみんなコーマン先生のところで若いころに食わせてもらっています。
ニューヨーク1997が初上映のときに、リー・ヴァン・クリーフが刑務所所長役で登場したので、なんでこんな大御所がカーペンターの映画に出ているのかと不思議に思いましたが、みんなコーマン先生を通じての知り合いで、頼まれれば出てくれるんですね。
ソ連制作の初のSF映画 火を噴く惑星
金星怪獣の襲撃 1968
ソ連制作の映画火を噴く惑星を買い取ってきたコーマン先生が編集しまくり。しかも二度目の作り直しでできた貴重な映画です。
見所は、ぴょんぴょん跳ねるゴジラの縫いぐるみ、どんぐりまなこのテラノドンドン、金星美女の呪いの儀式とその呪文。キリンの缶コーヒーみたいな名前を叫んでいます。
飛行士の男衆はロシア人、金星人はアメリカでの後撮影なので、互いに同じフレームでやり取りする部分はありません。
もともとの原作は私もDVDで持っていますが、こんな金髪美女は出てきませんでした。有人飛行の場合、生命か文明の痕跡を発見することにこだわるのは、昔も今も科学者の本能です。
最初の部分で2号ロケットの船長がロボットのジョンに指示を与えているところは、この船長、機械に催眠術をかけているのか? というほどの演出意図とは、うらはらの迫力を感じます。
見比べてみましょう。金星に住む金髪の美女は出てきませんが、それらしい人は出てきます。なによりも、地球側の通信をしている女性の頭が、マーズアタックしています。